不毛の流通対策費~10兆円はどこへ行く~VM Lab 辻井 良一
えっ!そうだったんだ
近年の日本の「広告費」の総額は約6兆円。世界に比べて多いのかなと思っていたら、実は国民一人当たり換算だとアメリカの半分程度と聞いて驚きました。(不勉強!)
驚きつつ、あっそうだ!と思い当たったことがあります。
そう、日本特有とも言うべき、莫大な「流通対策費」の存在です。少なく見積もって8兆円。多分10兆円超。一説では15兆円に及ぶといわれる巨額の「流通対策費」が、企業の営業活動費として使われています。

場所どりのワイロの存在
早い話が、メーカーが流通に払う「ワイロ」の様なものと、私は理解しています。(昔、メーカーの方が流通よりも強かった時代には、ワイロではなく育成費でした。リテールサポートと言う言葉はもう死語になりかけていますが・・・) ある時から、メーカーと流通の立場は逆転し、メーカーは、流通店頭の「売れる場所」を取るために、協力費を払うことが習慣になりました。
分かりやすい例を挙げると、GMSに行くと必ず目立つエンドでティッシュ/5個パックの特売をやっていますね。お客は(Brandなど関係なく)そこに山積みされているティッシュを買って帰ります。
その「売れるエンド」に、自社商品を置かせてもらうために払っているお金が「流通対策費」=販促協力金です。これは、SMでもCVSでも、飲料でも食品でも、形を変えて行われ続けている商習慣です。
一週間交代制
さてここに、大きな不思議があります。ティッシュのエンド確保競争。今週はお金を払った「ネピア」さんなのですが、来週はやはりお金を払った「クリネックス」さんで、次は「エリエール」さんで、次は「スコッティ」さんなんですね。
と言うことは・・・せっかく競合排除の為に払った協力金のはずが、年間を通してみると、4強で仲良く4等分??
だったら、払わなくても同じじゃないでしょうか?
まあ、これは極端な例え話なのですが、でも実態はこれに近いことが繰り返されているのが現実です。
どう考えても「不毛」な競争。生活者の利益に繋がらない浪費のように思えませんか?そのツケは、結局は買い手に回ってくるのですし。
アメリカでは公取法違反
実はこの場所どり合戦の「条件競争」、アメリカでは「ロビンソン・パットマン法」と言う、公正取引法のようなもので禁じられています。同一の商品は、同一の数量ならば同一の金額で卸さなければ不公平だと・・・これもどうかと思うのですが、やはり日本の現状の方が異常と思えてなりません。近年、オープン価格化などで、この協力金排斥の流れは芽生えつつありますが・・・。
差異性の無いメーカー・差異性の無い小売
この不毛の商習慣が根付いている原因は何でしょうか?日本のメーカーが、差異性の無い商品を量産しながら、競合よりも少しでも多く売ろうとシェア競争に走るからです。また、流通の側も、日本では殆どのSM,GMS,CVSなどが、ターゲットを分けることなく、同じ土俵で戦っています。
その結果、同じようなターゲット向けの、同じような商品を作るメーカーは、「シェアUP=場所どり=全流通へ働きかけ=流通対策・場所どり費」と言う流れを生み出してしまいました。
製販一体姿勢の有無の差
アメリカのメーカーと流通の関係は、日本よりは、かなり進んでいます。まず流通の側が明確なターゲット戦略を持っています。Aスーパーは高所得層狙い、Bスーパーは低所得層狙いと言う風に。
その中で、メーカーは特定の流通とがっぷり組んだ商品開発を行い、情報を共有して、生産ロットや在庫、物流の無駄の排除まで、徹底的に協業してコストダウンを図り、「A流通&Aメーカー」vs「B流通&Bメーカー」といった図式で、生活者の支持獲得に努力します。
必ずしも全てそうとは言いませんが、そうした潮流があるアメリカと、不毛の場所どり競争で消耗する日本とでは、大きな差があるといえます。
無駄な流通策費を、有効なマーケティング費に
日本特有の商習慣から生まれる、無駄な流通対策費を、有効なマーケティング費に変えて行けるといいですね。 そのためには先ず、メーカーも流通も、「自社ならではの価値」と言う、マーケティングの原点に返ることです。
商品や業態の「明確な差異性」「固有の価値」が確立されていれば、メーカーも週替りの場所取りに莫大な費用を投じなくて済むはずですし、流通も「不思議な副収入」に頼ることなく、生活者のハートをつかむ努力に、メーカーとの二人三脚で立ち向かってゆく方が有意義です。
エージェンシーは流通を知らない
広告業界の方たちにこのお話をすると、キョトンとされる方が多いようです。日本では従来から、「営業=メーカーの自社課題」で、広告の表現や媒体プラン(≒コミュニケーション)だけが「エージェンシーの役割」とされてきました。
でも、本当にそれでよいのでしょうか?
メーカー(Brand)の使命とは、自社のみが生み出す固有の価値を、それを求める人のところへ「届ける」こと。
Brandのエージェンシーは、Brandと生活者の関係を説くのであれば、やはり流通の仕組みにまで理解を及ぼして本当の「解」を探す必要があるのではないでしょうか。
*当VMLabでは、常に「製販一体」の視点で市場を見据え、「売り場開発」や「流通へのアプローチ」もBrandプロモーションの主要課題と位置づけて「買われる構造」構築を考えます。















