映画と読書: 2008年5月アーカイブ
血まみれのマリア。
阿部まりあさん。別名を「血まみれのマリア」という、救急センターのベテランナースさんがいる。「私は毎日、人を殺している」「今までにもう1000人以上も人を殺した」という。当然、それ以上の人の命を救っている裏返しなのだが、その言葉の重みに引かれる。
日毎夜毎、運び込まれてくる生死の境の緊急患者の救命医療で、若手の医師を怒鳴り飛ばし、緊急オペと投薬を次々に指示して一刻一秒を争う現場を仕切り、血まみれになりながら救命医療に従事している。ある時は、胸部切開の心臓マッサージで患者を生き返らせた血まみれの手で、部長教授の横っ面を張り飛ばしたこともある。胸のすく傑女である。
だが僕は彼女に会うことは叶わない。何故なら彼女は、浅田次郎の小説(プリズンホテルときんぴか)の中に住んでいるからだ。
今日(5月23日)、柳本ジャパンが北京行きを決めた試合の後、何気なく観ていたフジテレビのドキュメント”最強ドクター・・・”で、「緩和ケア医療」の一線で働く看護師長のナースさんを見て引き込まれた。彼女は実在の33歳の女性だった。血まみれにはならないが、僕は番組を見ながらずっと”血まみれのマリア”とイメージをダブらせていた。
彼女がその仕事にかける情熱が、僅か数分の映像から伝わってきたからだ。
癌の痛みは想像を絶するものらしい。十数年前に亡くなった父も癌治療中に併発した帯状疱疹の痛みと戦っている姿が痛々しかった。
モルヒネなども適切に投与する「緩和医療」は、従来末期の処置としか見られてこなかった領域を、新しい医療に引き上げつつあると言う。
激しい痛みは患者の睡眠を奪い、気力を奪い、人格を害する元凶のようだ。それをケアする医療は、単に人道上の問題ではなく、実効的な医療の一環として重要と思われた。
民放TVのコンテンツには120%くらい批判的な僕だが、今日のたまたまの2時間ドキュメントは、なかなか上質だった。


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