マーケティングの話: 2009年12月アーカイブ

広告の終焉<マーケティングの浮上

広告の役目は、本当に終わったのかもしれない。

或いは・・・本来の役割に帰ったのかもしれない。

少なくとも、「広告で売れる」と言う幻想は去ったことは、業界に生きる人なら誰もが否定しない事実だろう。

今、TVをはじめとするメディアで流れているさまざまな広告は、ほんの十年前のそれとはまるで違う。

広告で売れるためには、広告以前の(当たり前の)マーケティングの努力が必要だ。

必要条件としての十分なマーケティングがあって、さらにそれを加速する手法の一つとして、広告も考え得る。という本来の姿に帰ったのだと思う。(そう、思おう)

「売れない時代」も長くなって、売り手は一様に気づき始めた。売れるためには・・・(広告の工夫の前に)マーケティングの努力が肝要なのだと。

昔々・・・広告や販促が全盛のころ、我々、広告や販促の作り手から見ると、”厄介な”クライアントがあったことを思い出す。わかりやすい例を挙げれば、マクドナルドやケンタッキーだ。

なぜ(我々側から見て)厄介だったか?

それは、彼らは、広告の表現の工夫の前に、メニューと価格を工夫することで、売れたり売れなかったりすることを知っているクライアントだったからだ。メニュープロモーションと言う奥の手を持っている=広告代理店の思うままにならない、厄介なクライアントだったのを思い出す。

ケンタッキーのクリスマスバレルは面白いように売れたし、マクドナルドの100円バーガーは市民の常識を変えた。広告の貢献は、その事実の伝達を加速するだけの、本来の役割に限定された。

つまり、小刻みな(=正しい)マーケティングを、体質的に知っているクライアントだった訳だ。本当に顧客が望む価値を提供する努力が先にあり、それに振り向いてもらう手段の一つとして、広告もある。

今、そうした工夫を取り入れているメーカーが急速に増えたと思う。飲料や菓子やインスタント食品などに顕著だ。

漫然と同じものを売り続けるのではなく、今、消費者の心を捉えるのではないかという”商品”を生み出すことにエネルギーを注ぎ、次々に新しい商品を送り出す。流通のバイヤーに働きかけ、それを棚に並べてもらうことに労力をかけ、消費者の反応に全てをかける。支持を得た商品にさらに力を入れてゆく。

これは売れるのでは?と言う感触を掴んだところで広告を打って加速を図る。

これが・・・正しい流れだろう。

つい何年か前まで、これが正しい順番だと考えていないクライアント、広告代理店が、広告の表現工夫とリーチの計算に命をかけていた。

広告よりも<マーケティング。

考えてみれば、当たり前すぎる結論だ。

子ども店長、日立のCMでアルバイト?に思うこと。

TOYOTAの子ども店長が、今度は日立のCMに登場だ。

先週初めてCMをみて、あれれれ???と思ったのは僕だけだろうか?

天下の日立が・・・それって有り?ちょっと、節操が無くはないか?

売れっ子のタレントが複数社のCMを掛け持ちして、ひどい時には同一タレントのCMが2本連続で流れてしまうなんてこともしょっちゅうの世界で、好感度の高い人気タレントが引っ張りダコとなるのは、それはまあ致し方ないとも言える。

でも・・・こればっかりはどうだろう?

この名子役?(加藤清史郎くんと言うそうだが)は、もちろん劇団所属でそれなりの芸歴もあるらしいけれど、なんと言っても、彼のアイデンティティーは、100人に聞いたら100人が、TOYATAの子ども店長!と、答えるだろう。

確かに認知度が高い。確かに人気だ。しかしそれは全て、TOYOTAのCMで築かれた資産だろう。残念ながら僕は、彼が名演するドラマで泣いたこともないし、舞台で笑ったことも無い。つまり、TOYOTAのCMで作られた架空のキャラクターであって、一個のタレントだとは認識していなかった。

加藤くんには失礼ながら、日立のCMは何度見ても、僕にはTOYOTAの子ども店長が、日立でアルバイトしているようにしか見えない。あのお母さんが怒って連れ戻しに来はしないかと心配になる。(笑)

この起用を提案した代理店はどう考えたのだろう?受けた日立はどこを狙って決めたのだろう?代案はどんなだったのだろう?正直に言って、僕にはこの案を提案する勇気は湧いてこない。

TV広告やマスメディアの世界には、何か世間とは違う常識や理屈が巣食ってしまっているような恐怖を感じる。

さあ、今度は・・・SOFT BANKのお父さん犬が、よそのCMに出るのを楽しみに待とうか。

プロフィール

VM Lab 辻井 良一

1983年セールスプロモーションの企画制作会社「株式会社アイベックス」を設立。プロモーション・プランナーとして、「売れる仕組みづくり」をキーワードに、さ まざまな企業の販促キャンペーン、市場導入プラン等に携わる。日本初のネットキャンペーン、キリンビバレッジ社「ネットでFIREキャンペーン」などを手がける。
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25年間プロモーションの最前線で、「売れる仕組みづくり」に携ってきた私、辻井良一(DG&Ibex創業者)が主宰する、「これからのマーケティング」を考えるラボです。
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