新しい年に向かって
たまたまのやぼ用で、シンガポールで年の瀬を迎えることになった。
今回の旅行では、珍しく「山本五十六」何ぞと言う分厚い文庫本を持って来てしまっていて、昭和十年代の日本の外交的な危機から、三国同盟へ、太平洋戦争開戦へ、そして敗戦へと言う流れを改めて復習させられている。
「復習」とは 言ってはみたが、実はこの言い方には多少の違和感がある。僕は昭和25年生まれ、団塊のぶら下がり世代で、戦後の民主教育の実験台になった訳だが(これはかなり後に気が付いたことだが)自慢では無いが「昭和史」は、きちんと学んだ記憶は皆無に近い。
教科書には、多少は載っていたのかも知れないが、そのくだりはどの教師も駆け足ですっ飛ばしていた様に思う。「戦犯」東条英機の名はさらりと習ったかも知れないが、東京裁判の詳細は全く学んでいない。山本五十六も習わなかったし、乃木希典も秋山真之も、教えてくれたのは教師ではなく司馬遼太郎だった。
今にして思えば、父や母、叔父や叔母たち、つまりつい数年・数十年前に、身をもってその時代を体験した多くの先輩たちも、けしてその時代のことを多く語ろうとしなかった。
今、クアラルンプールを経て、この地シンガポールに入り、その繁栄と喧騒を眼下にしながら、明治の開国以来150年の日本の歴史と重ねて観るのは、今更ながらに思うところも多い。
差し入れられた日経新聞では、野田首相が消費税率の引き上げを確かなものにしようと奮闘している様子が伝えられていた。
欧米では既にはるか以前から10%15%が常識だから、今論じられている8%10%は、決して無謀な議論ではないのだろう。無謀とは言えないが、相当に大きな影響を及ぼす改定だろう。経済全体に与える影響が案じられる。
88年に竹下内閣が初めて導入した時は3%だった。それが、94年に村山内閣で5%に引き上げられたころ、政府はしきりに(特に小売りの現場での)内税表示を推進した。チラシで980円!と謳われているものは、実は本体933円で税金47円が含まれている。
一方、僕らの広告業界を含め大方のBtoBの世界では、今でも外税の感覚が一般的だ。実際問題、企業の予算組みでも、売り上げを外税で考えれば、経費も外税で結果はつじつまが合ってくる。
一つ気になることがある。中小零細企業向けの優遇処置のことだ。現在、設立2年以内の零細企業には消費税納税が免除されている。思えばおかしな「優遇処置」だ。他人様が支払った税金が、私企業の懐に残る。明らかな益税だ。
会社をやったことのある人なら、肌身で感じていることと思うが、額に汗して一年間働いた後の決算で「最終利益」を残すのは本当に難しい。最終利益率5%(1億で500万、10億で5000万だが)なら、超優秀!売り上げの中から仕入れと経費を支払い、最終益3%があればすこぶる立派だ。
そこへ、消費税10%の時代が来る。売り上げ規模で数億円の事業に、数千万円の預かり消費税が付いて回る仕組みだ。経営に苦しむものなら、のどから手が出る数字(金額)ではないか? 益税を生むような法制の穴は堅固にふさいでほしいと願う次第だ。
歴史は教訓だ。日本の消費税も導入以来四半世紀を経ているのだから、そこにはすでに歴史がある。欧米の先進事例も多々ある。これを、我々は学びに学んで、次の税制を確かなものして行かなくてはいけない。
自由主義経済化で、消費税は最も公正な税金の一つとは理解するが、これはもう最後の砦だ。10%の後に、もう一段階15%の懐は残されているかもしれないが、消費税率20%や30%はさすがに考えにくいだろう。この税制に耐えて、我々は立ち直らなくてはいけない。
心配が一つある。消費税などで先行してきたEUなど欧州の経済の行きづまりだ。すべてがうまくいっている先進国の手本を、我々は今失い始めている。
あのようにやれば、きっといい国になるという目標がない。
無謀な昭和と復興の昭和と、繁栄の平成と沈滞の平成の、忙しい歴史を我々はすでに生きてきた。その間、憧れにも思えた欧米の繁栄はすでに昔語りで、新興のこの地、例えばシンガポールにすら、頭打ちの兆しがちらつき始めているという。
自らの歴史を、自らの目で見つめ、自らの観点で力に変える「力」がいる。それだけが、次を生み出す唯一の方法なのではないかと、今更の昭和史(の一つの観点)を、今更に読み終えて、少々感慨深い2011年の12月31日だ。
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