東ティモールで考えたこと(2)この国でマーケティング!
バリにもあって、ここにもあるのは美しい緑と青い空だけ。この国には、トイレはもちろんだが、国家と言うものが国家として存在する上で、或いは国家として発展していこうとする上で、まず不可欠と思われるインフラがほとんど何も無い状態なのだ。もともと無かったものも多い、そして99年以来の騒乱で破壊されつくした。僕らの宿舎、ホテルオーディアンには正面に物々しい金網が回る。これもそうした首都の混乱の際の残影の一つだ。
港が無い・・・実はあるけれど大きな船がつけない。税関の機能が無い・・・一応あるけれども、人手も足らず処理能力が無いから通関に日数を要する。だからビジネスになりづらく、貿易業者からは敬遠される。道路も無い、鉄道はもちろんない。
いや道路は一応あるのだけれども、幹線から一歩はずれると、そのひどさは筆舌に尽くしがたい。首都からほんの数十キロの村まで4時間5時間、4駆の座席で筋トレのお仕置きだ。これでは、人とモノの移動が進まない。
お店が無い、問屋が無い、郵便制度が無い。いや、お店も首都ディリにはそれなりにあるのだ。しかも、一年前と比べると、今年は確実に賑わっていた。ディリでは種類にさえこだわらなければ、ほぼ必要なものは揃うようになったという。長足の進歩だ。
しかし、10キロ離れると、そこにはもう何も無く、国内の物流はピタリと止まるのだ。
辻井さん!東ティモールでマーケティングをやってくださいよ(笑)!!と、件の佐藤女史に言われた。
マーケティング?
「マーケティングとは配貨の科学が原点」、必要とする人のところに、必要とされるものを届けるのがマーケティングの基本だ、と言うのは、長く僕の自論だった。・・・その心は、広告や販促の前に、売り場を確保しないといけない。つまり、小手先のコミュニケーションの工夫の前に営業的センスを磨かなければ物は売れないと言う説明のロジックだった。
この国でマーケティングを!と彼女の言う意味は、つまり、人とモノと情報の流通の仕組みを作れと言うことなのだ。
途上国でのマーケティングには、生産設備だけではなく、独自の流通機構が必要で、それを成した所が成功している例はよく聞く。インドなどにおけるP&G、日本の企業ではAJINOMOTOが草の根の販売網でアジアを始めとする途上国に市場を広げている。
だが、ここではもう一つ前の基本的インフラから築かなければ、経済自体が興らないのだ。
佐藤さんの滞在するロスパロスはこの国の東端の海岸にある。美しいところだと言う。
彼女は、そこで保健衛生の普及活動に努めているのだが、NGOの活動の一環として、村人を指導して天然素材の、ステキな石鹸を作っている。1個50セント。利益は20セントだと言う。彼女は今回その石鹸を100個持ってきていて、ユニセフの久木田代表のお宅のパーティーで売った。日本大使も見えていた。僕らも買って、あっという間に売り切れた。
そこで、マーケティングの問題だ!
今回彼女は、夜行の乗り合いバスで8時間かけてディリに来てくださった。満員のバスにはたくさんの荷物に加え、生きたニワトリまでが持ち込まれ、彼女の両側の席の子どもが酔って吐いていたと言うから、その大変さは想像するに余りある。
そのバスが、片道7$するのだと言う。
辻井さん、考えてみてくださいよ! 石鹸100個売って50$/利益は20$。バスで往復16時間一泊2日、バス代が14$では、この数倍を抱えてきたとしても商売になりませんよね。この国の現状は、今、全てがそうなのですと。
ちなみに、ディリ以外にはそれを買う人はいないし、お店も全く無いのだ。
では先ずは自前のトラックかな? そうして、お店だな~。それにしても買うのはわずかな外国人だろう。売れるお店は・・・ホテル?空港?いや、ネットで? ・・・待てよ、DHLは10キロで10万円以上かかったな・・・、と、僕はこの段階ではマーケッターとして落第のままなのだが・・・・。
それでも、この国には石油資源があり、鉱物資源がある。宴会の漁業権も大きな利権だ。もちろん、観光産業の可能性も計り知れないが・・・それらを生かすには、先ず、インフラ・ビルディングが必要なのだ。
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