浅田次郎にやられた。

元旦早々、不覚にも浅田次郎に泣かされてしまった。

旅行中の暇つぶしにと、何気なく買った集英社文庫「天切り松 闇がたり」。三巻のうちの第一巻第一章から見事にやられてしまって、その後はもうはやられっぱなしである。

情けない話だが僕は涙もろい。だが、悲しい話、辛い話には結構耐えられる。むしろ「世の中にはもっと辛いことだってある。泣いてる場合じゃないだろう」と言う醒めた気分になってしまう。ただ(根が悪人のせいなのか?)善人の話に弱い。しかもそれが多少なりとも屈折したり汚れたりしていて、その中での努力や誠意が人に通じる瞬間に弱い。お察しのとおり、高校野球では結構泣く。金八先生なども、極力見ないようにしているのだが、たまたまサビのシーンなどが目に飛び込んで来てしまうと、前後は知らなくても物の五分で泣いてしまう。まあ、早い話浪花節オヤジの典型だ。

ところで、浅田次郎って何者だ?と、改めて思った。

                       

この人、尋常じゃないな~。人間社会の相当に深くて暗い所まで、覗いて帰ってきている人なんだろうなと、今回改めて思った。この小説に限らず、人の「性根」の書き極め方の芯が深い。登場人物に語らせる一言の「凄味」が重い。


小説家も多様だ。聡明な哲学者風は多い。博識仁徳の作家も多い。人間の弱さをさらけ出し、書き上げる文士もあまた居る。そう言う人たちの小説も大好きだ。でも、この人はちょっと異質だと(蒼穹の昴・中原の虹の時から)感じていたが、今回いよいよその感を新たにした。                                           
                                           
浅田氏は僕とほぼ同い年の人(56?)だ。おじいさんと二人暮らしの時代があって、徒然に昔語りを聞いたと言う話を、機内誌で読んだような記憶がある(違っていたら御免なさい)。主人公の「天切り松」は、大正6年に10歳前後だったと言う設定だから、僕の死んだオヤジより10歳ほど年上。この江戸っ子の、盗人の、老人の話に今日は旅先のプールサイドで朝から泣かされた。不覚にも鼻水をすすりながら読み進んでいるところに、ホテルのボーイが来てエキュスキューズミーサーだ。ほっといてくれ。                                           
                                           
明治人の気骨に比べて、大正のバブル期に育った世代の人のことを「存外軽い」という風に言う人が居るがどうだろう。             
                                           
江戸文化とつながる明治の空気を肌で知り、大正の躍動感の中に生き、その後の軍国主義、大陸を視野に入れた経済から、大戦、敗戦、一気に民主主義の時代に変わり、かつ復興を果たしたこの時期の日本を、自分の視点で生き抜いた人を「軽い」などという資格は、僕らには金輪際ないと、戦後生まれの僕は思う。彼らは明らかに、僕らとは人生の「尺度(スケール軸)」が違うと。                                           
                                           
それに比べて・・・・今はどうだろう?楽しい日々に流されて、周りを顧みないノー天気や、わずかな差異にこだわって弁を振るったり、狭窄な信念で自分の殻に立てこもる若者の多さを、何となく感じる。「平和」のなせる技だ。                                           
                                           
海外を旅していて、「日本人」はすぐに見分けられる。似た風貌でも、中国人・韓国人は眼光が鋭い。善しあしは別にして、周囲と戦う気構えの片鱗が、どこかに滲んでいる。つまり、殺気がない東洋人=日本人と見ていれば99%は正解だ。                                          
                                           
浅田氏は旅行好きだと聞く。彼は、多少の殺気を笑顔の下に上手に隠して旅をしている人だろうと思う。

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1983年セールスプロモーションの企画制作会社「株式会社アイベックス」を設立。プロモーション・プランナーとして、「売れる仕組みづくり」をキーワードに、さ まざまな企業の販促キャンペーン、市場導入プラン等に携わる。日本初のネットキャンペーン、キリンビバレッジ社「ネットでFIREキャンペーン」などを手がける。
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